自分の遺伝子を半分持った小さな生き物が小さな布団で小さな寝息を立てて転がっていたそばで 同じく転がってみた。
知らぬ間に意識を失い そして夢を見た。
懐かしい匂いと懐かしい感触。懐かしい声に振り向くと そこには懐かしい顔があった。
おそらく僕の人生で この人以上に僕を愛してくれる人はいないだろうと そのときからずっと思っていた。そんな人。
何年前なんだろう。
ふとよぎる疑問が掠めたけれど それはすぐ 懐かしい手と指と唇に掻き消されていた。
こんなに愛されていた。
こんなに大切にされていた。
同じぐらい気持ちはあったはずなのに それなのに僕は この人にそれだけの気持ちの10分の1も伝えられていなかったと思う。
それでも この人は 分かってくれていた。
何も 言えない僕を 上手く表現することができない僕を この人だけは 分かってくれていた。
僕は きっと 幼かった。
上手に人を愛することも それを伝える手段も 知らなかった。
どうして 終わらせてしまったんだろう。
どうして あの時、僕は・・・
目を開けると そこには 現実が あった。
小さな布団に 小さな体で 小さな寝息をたてる生き物。
あまりに 鮮明に 夢を覚えていた僕は 少しの苦しさを味わっていた。
幸せな 空気 懐かしい 感触 愛した 人 そして それら全てに向けられた 僕の 後悔。
それでも 僕は 今ある 現実と 生きていく。
悔やんだところで あの時間も あの感触も かえってはこない。
あの声で 名前を呼ばれることも もう・・・二度と。